野球少年(小学・中学・高校生)とお父さんが一緒に学習。
判り易く
物理屋が解説! 野球技術論
最新改訂: 2015.9.18
目次
「はじめに」
「怪我・故障の原因」
「ウォームアップ・ストレッチ」
「痛いと感じたら」
「アイシング」
「投球制限」
怪我・故障
つい最近、近くの病院(水戸市・北水会)にて、理学療法士によって開催された、『スポーツ・リハビリ』と題する、セミナーに参加する機会が有りました。 100名限定との広報でしたが、用意された席は満員の盛況で、地域スポーツ愛好者の関心の高さを実感しました。医療法人による、ボランティア(無償奉仕)のこのような催しは、極めてまれ・珍しく、関係各位の熱意の賜物と、感謝しています。
「はじめに」
野球をはじめ、アスリートにとって”怪我・故障”は、つきもので、避ける事が出来ません。しかし、軽減することは、可能です。 それには、日頃のストレッチと練習前のウォームアップが絶対条件です。 ストレッチ・ウォームアップ・アイシングの方法は専門家(トレーナー・スポーツ整形外科医・理学療法士等)に指導して貰うのが最適です。 整体院・接骨院等の中には、運動知識不足から間違った、指示をし、症状を悪化させるケースが結構見られ、注意が必要です。
私事ですが、 50歳を遥かに過ぎても、小学・中学・高校生相手に、バッテイング・ピッチャーをしており、多い時には250球を超えることが有ります。練習後は、勿論アイシングを欠かしません。 それを可能にしているのは、毎日の散歩・朝晩のストレッチ、週一の水泳等、日頃から運動を心がけてる賜物です。 ストレッチは下図の様な簡単なもので、一回に10分程度で、無理な動作をしている訳ではありません。それらは、股割・上下肢・肩/肩甲骨を中心にやっています。 反動をつけず、ユッタリ・ジワーっと動かします。
特に股割は、入念にします。経験から、股関節が柔らかい事で、全ての動作(ピッチング・バッテイング・キャッチング・ランニング)がスムーズ・スピーディになります。
股割り

両足は、出来るだけ肩幅より広げ、お尻を両膝よりも低いく、両腕の肘で内股を広げます。股関節の可動範囲が大きくなります。
上下肢

両足を交互に、前足を膝から大きく踏み出し、後足膝は一直線に、曲げない様、両足の踵は、地面に着いたまま、上げない様にします。上体は出来るだけ、直立し前倒しにならないように。
膝・足首関節と上下肢筋肉を柔軟にします。
肩/肩甲骨

両足を肩幅よりも若干広めにし、肘を揃えて、胸の前から、横・後ろに回転・広げます。左右両肩甲骨が背中の真ん中で、くっつく様にします。肩関節の可動範囲が広がります。
「怪我・故障の原因」
多くの小学生に見かける、故障・怪我の第一の原因は”オーバー・ユース”です。 どこのスポ少チームにも、当たり前のように、肩・肘の怪我人が1-2人見かけます。 投げ方をとやかく言いますが、まずは、練習・試合前のウォームアップ・ストレッチ不足とオーバーユースが大きな原因です。
ほとんどのチームでは、練習・試合前のウォームアップ・ストレッチは子供任せ、習慣で、なんとなく・ダラダラと、体を動かすだけで、監督・コーチが指導・管理してるチームは非常にまれです。 子供たちがウオームアップ間、大人たちは、煙草を吸い(何故か、喫煙者が多い!)、当番お母さんが用意した珈琲を飲みながら、世間話に花が咲く。
試合中の、子供たちの様子が、眼中に無い指導者も多い、勝ちには拘るけど、故障怪我には気配りが無い。 監督に”いけるか!?”と言われて、”大丈夫です!”という子が殆ど、まず”ダメです”という子は、まれのマレ。
ごく少数ですが、ピッチャーで打たれたり、コントロールがままならず、大量失点すると、肩・肘をさすったり、なでたり・・・と、監督にアピールする子もいます。
指導者の観察眼は非常に大切ですし、難しいですが、子供の心理状態を把握するのは大事です。
中学校の顧問教師も同じようなもので、野球指導には程遠いのが現状ですね。 現在の風潮なのでしょう、上司(校長・教頭)・教育委員会・PTAの顔色を窺うのが優先ですね~~~。 教師は可哀そうですが、それ以上に生徒が可哀そうです。
アメリカでは、スポーツ指導者はライセンスが無いと認められません。 市・州には必ず、ユーススポーツ指導者講習会が定期的にあり、技術論はもとより、スポーツ医学・スポーツ力学を学びます。 技術セミナーは、私的・公的団体が数多くやっています。 私が参考にしているのは、MLB アカデミー、 全米ユース野球協会、IMG アカデミー 等です。
「ウォームアップ・ストレッチ」
ウォームアップは、練習・試合で、高いパフォーマンスを表すための準備で、怪我・故障から体を守る、重要な行為です。全てのアスリートが、必ず・十分にしなければなりません。 しかし、多くの(殆どと言っても良い)スポ少チーム・中学校野球部では、指導者抜きで子供に勝手にやらせてるのが実情です。子供たちは、一つ一つの動作の目的を考えもせず、先輩から受け継いだ方法・順序で、なんとなく体を動かすのみで、ウォームアップで汗がにじみ出てるのを、見たことが有りません。
数少ないですが、トレーナーを担当するコーチがいて、前後のウォームアップ・ストレッチを入念にしている、高校チームを見かけることが、多くなってきています。
「痛いと感じたら」
少しでも、”痛い””違和感がある”と感じたら、専門家に相談・医師の診察を直ちに、受けましょう。 それは、怪我なのか? 成長痛なのか? 単なる打撲なのか?
今の病院は多様な検査・診断装置を有しています。 エコー(超音波)・MRI・X線などで、専門医師が的確に診断し、適切な医療をしてくれます。 それらには、飲み薬・貼り薬はもちろん、回復を早めるリハビリが欠かせません。
素人の思い込み判断は、絶対に避けましょう。
「アイシング」
練習・試合で、同じ動作を数多く繰り返すと、局部的に筋肉・靭帯に疲労・ストレスが集中します。 特に、ピッチャーは投球の繰り返しから、肘・肩に大きな負担がかかり、局部的に発熱を伴います。 アイシングは、熱を吸収し、疲労回復を促進します。
ピッチャーばかりでは無く、投球の多い、キャッチャーもアイシングが必要です。
冷媒を直接肌に触れさすのは厳禁です。必ず、タオル当てて間接的に冷やします。
過剰な冷却は、凍傷を負うなど、逆効果となりかねません。冷媒(氷+水、アイスパック等)によっても違いますが、時間の目安は、15分以内とします。
コールドスプレーを、長時間至近距離から、吹き付ける行為は、凍傷を引き起こしやすいので、注意が必要です。
やみくもに冷やすのではなく、ポイントを正しく認識し、効果的に冷やします。
スポーツ整形外科医、理学療法士等専門家のアドバイスを得てください。
「球数制限」
何と言っても、怪我・故障の大きな原因は”投げすぎ””振りすぎ”等の”オーバー・ユース”です。 それは、気候条件で大きく変わります。 春先・晩秋の寒い日には、充分なウォームアップが必要です。寒さが厳しい、風が冷たく体感温度が低い(5°以下)冬季には注意が必要です。まして、霙交じりの日に練習・試合をやるのは、もっての外で、指導者には、強行する蛮勇よりも中止する勇気が必要でしょう。
日本でも関係者の間で、再三ピッチャーの投球数制限が話題になる事がありましたが、未だに統一した見解を得るには至っていまん。
反対する意見の中には、指導者自身が自覚し、子供の能力に合わせて、制限すれば良い。体力差が有る子供を一定の基準で縛るのは、上達を阻害する。などと子供の保護、将来への可能性を蔑ろにし、気合と根性を言い張る、理論度外視の指導者が数多くいるのが実情です。
野球先進国アメリカでは、将来の野球人生を視野に、ユース時代(18歳以下)では、故障・怪我を極力なくし、基礎体力・基礎技術を習得することが優先されると、明確に示されています。
従って、アメリカでは、一番負担がかかるピッチャーの投球数制限は、国の統一基準があり、更に州毎に、細かい規定を設けています。
一例を以下に示します。


